AI・ロボティクス時代の“目”を学ぶ
~ゼロからわかる!産業カメラ入門~
④ インターフェースと通信プロトコル
産業用カメラを使ったシステムでは、カメラ本体だけでなく、どのインターフェースや通信プロトコルを選ぶかが性能や構成に大きく影響します。転送速度や安定性、ケーブル長、コストなどは、選択する規格によって大きく変わります。
第4回では、産業用カメラで用いられる主要なインターフェースと通信プロトコルについて、それぞれの特長をご紹介します。
インターフェース・通信プロトコルとは?
「インターフェース」は、異なるシステムやデバイス間で情報をやり取りするための 「接続部分や通信方法の標準規格」 を指します。
近年の産業用カメラでは、デジタル信号による通信が主流となっており、マシンビジョン用のハードウェアインターフェースとして
・ Camera Link
・ USB3 Vision
・ GigE Vision
・ CoaXPress
等があります。
「通信プロトコル」 とは、デジタル信号をやりとりするための 「ソフトウェアの標準規格」のことを指します。
上記 「インターフェース」 規格の中に、「通信プロトコル」 も規定されています。
マシンビジョン用の 「ソフトウェア標準規格」 としては、
・ GenICam
・ IIDC2
があります。
これら「インターフェース」と「通信プロトコル」により、伝送速度や伝送距離などが規定されるため、カメラメーカはユーザが用途に応じて選択できるよう対応機種のラインアップを揃えています。
インターフェース・通信プロトコルの用語解説
① 接続方式
-
- ・カメラとホスト機器(PCやフレームグラバ)を物理的に接続する方法を指します。接続方式によって使用するケーブルやインターフェースが異なり、通信速度や安定性に影響します。
-
- ・USB接続: PCのUSBポートを利用して接続します。一般的にUSB3.0以上が高速転送に適しています。
- ・Ethernet接続: LANケーブルを使用し、GigE Vision規格に基づいて接続します。長距離伝送が可能で、産業用途で広く利用されています。
- ・同軸接続: CoaXPress規格で使用される接続方式です。高帯域幅と長距離伝送に対応します。
- ・専用ケーブル接続: Camera Linkなど、専用規格のケーブルを使用します。低遅延で安定した通信が可能です。
■ 定義
■ 例
② データ伝送形式
-
- ・画像データをどのような形式で転送するかを示します。転送形式は画質や帯域幅の使用効率に影響します。
-
- ・非圧縮転送: 画質を重視し、データを圧縮せずに送信します。GigE VisionやUSB3 Visionで採用されます。
- ・圧縮転送: 帯域を節約するため、JPEGやH.264などの圧縮方式を用います。画質は若干低下しますが、効率的な伝送が可能です。
- ・パケット転送: EthernetベースのGigE Visionで使用される方式で、データをパケット単位で送信します。
- ・シリアル転送: Camera LinkやCoaXPressで採用される方式で、データを直列に送信します。
■ 定義
■ 例
③ 画像データ転送速度
-
- ・画像データを1秒間に転送できる量を示します。帯域幅とも呼ばれ、通信性能を評価する重要な指標です。
-
- ・Gbps(ギガビット毎秒)
- ・MB/s(メガバイト毎秒)
-
- ・USB3 Vision: 約5Gbps
- ・GigE Vision: 1Gbps(5GigE ⇒ 5Gbps、10GigE ⇒ 10Gbps)
- ・CoaXPress: 6.25~50Gbps
- ・Camera Link: Base=最大約2Gbps、Full=最大約6.8Gbps
■ 定義
■ 単位
■ 例
④ ケーブル長
-
- ・カメラとホスト機器(PCやフレームグラバ)を接続する際の最大距離を指します。ケーブル長は設置環境やシステム設計に大きく影響します。
-
- ・USB3 Vision: 約5m(USB規格の制約による)
- ・Camera Link: 約10m(信号品質を保つための制限)
- ・CoaXPress: 約30m(銅ケーブル)、光ファイバーを使用すれば数百mまで延長可能
- ・GigE Vision: 約100m(Cat6aケーブルを使用)
-
- ・長距離伝送が必要な場合は、光ファイバーやリピータ(またはHub)を利用することで対応可能です。
■ 定義
■ 例
■ 補足
⑤ 給電容量
-
- ・ケーブルを通じてカメラに供給できる電力のことです。給電方式によって追加の電源が不要になるため、配線の簡略化に役立ちます。
-
- ・PoE(Power over Ethernet): 最大15.4W
- - PoE+: 最大30W
- - PoE++: 最大90W
- ・PoCXP(Power over CoaXPress): 最大13W/ポート(4ポートで最大52W)
- ・USB給電: USB3 Visionで対応、最大4.5W
- ・PoE(Power over Ethernet): 最大15.4W
-
- ・高消費電力のカメラでは、外部電源が必要になる場合があります。
■ 定義
■ ケーブル給電が可能なインターフェースの例
■ 補足
⑥ フレームグラバボード
-
- ・カメラから送られる画像データを受信・処理する専用ボードです。特に高速インターフェース(Camera Link、CoaXPress)では必須となります。
-
- ・高速データ転送を安定して受信
- ・画像処理の前段でデータをバッファリング
-
- ・高速DMA転送(*1)による効率的なデータ処理
- ・トリガ同期機能で撮影タイミングを制御
- ・バッファリング機能(*2)でデータの欠落を防止
■ 定義
■ 用途
■ 特長
*1:DMA転送(Direct Memory Access): CPUを介さずにデータをメモリへ直接転送する仕組みです。
*2:バッファリング機能: データを一時的に蓄える仕組みで、転送の安定性を確保します。
インターフェースの特長
① Camera Link
-
- ・専用ケーブルを用いた産業用カメラの古典的な高速インターフェース
- ・フレームグラバを使用し、低遅延・高信頼性
-
- ・帯域幅:Base(255MB/s ≒ 2Gbps)~Full(850MB/s ≒ 6.8Gbps )
- ・ケーブル長:最大約10m
- ・ケーブル給電:PoCL対応により、通信ケーブルでカメラに給電可能
- ・Camera Link HS:最大10Gbps/レーン(複数レーン構成で数十Gbpsまで拡張可能)
-
- ・低遅延・高信頼性:リアルタイム性が高い
- ・産業用途で実績豊富:長年の採用実績
-
- ・ケーブル硬く、取り回し困難
- ・拡張性が低い:長距離不可、規格が古く将来性に乏しい
- ・フレームグラバ必須:追加コストがかかる
1. 概要
2. 特長
3. メリット
4. デメリット
(東芝テリー株式会社製)
② USB3 Vision
-
- ・USB 3.0規格をベースにした産業用カメラの通信規格
- ・GenICam準拠で、標準化された制御・画像転送が可能
-
- ・高速データ転送(最大約5Gbps)
- ・PC直結で追加ハードウェア不要
- ・汎用性が高く、低コスト
-
- ・安価で導入容易:PCのUSBポートを利用可能
- ・高帯域:高解像度・高fpsカメラに対応
- ・標準化:GenICam対応でソフトウェア互換性あり
-
- ・ケーブル長制約:通常5m程度、延長にはリピータや光変換が必要
- ・ノイズ耐性が低い:長距離や工場環境では不利
- ・電源供給制限:USB給電は消費電力の大きいカメラでは不足
1. 概要
2. 特長
3. メリット
4. デメリット
(東芝テリー株式会社製)
③ GigE Vision
-
- ・Ethernetベースの産業用カメラ規格
- ・1Gbps~10Gbps(10GigE対応)
-
- ・ケーブル長:最大100m(Cat6a)
- ・PoE対応で電源供給可能
-
- ・長距離対応:工場ネットワークに統合しやすい
- ・汎用性:LANスイッチ経由で複数カメラ接続可能
- ・低コスト:ケーブル・スイッチが安価
-
- ・帯域制限:1Gbpsでは高解像度・高fpsに不向き
- ・遅延あり:リアルタイム性はCoaXPressやCamera Linkに劣る
- ・設定が複雑:ネットワーク構成やIP管理が必要
1. 概要
2. 特長
3. メリット
4. デメリット
(東芝テリー株式会社製)
④ CoaXPress
-
- ・同軸ケーブルを用いた高速インターフェース
- ・最新規格では最大50Gbps(複数リンク)
-
- ・ケーブル長:銅で30m、光で数百m
- ・電源供給:PoCXP対応
-
- ・高速・高解像度対応:ラインカメラや8Kカメラに最適
- ・長距離対応:光変換で数百mまで可能
- ・低遅延・産業用途向け
-
- ・高コスト:カメラ・フレームグラバ・ケーブルが高価
- ・複雑な構成:複数リンクや専用ハードが必要
1. 概要
2. 特長
3. メリット
4. デメリット
(東芝テリー株式会社製)
通信プロトコルの特長
① GenICam
-
- ・カメラ制御の標準化規格で、GigE Vision、USB3 Vision、Camera Link、CoaXPressなどの異なるインターフェースを統一的に扱うためのAPI仕様
-
- ・カメラの機能(露光、ゲイン、トリガなど)を抽象化し、同じAPIで制御可能
- ・XMLベースのカメラ機能記述(Feature Description File)
- ・ソフトウェア開発者はインターフェースに依存せず開発できる
-
- ・互換性の確保:異なるメーカー・インターフェースでも同じAPIで制御
- ・開発効率向上:SDKやライブラリがGenICam準拠ならカメラの切り替えが容易
- ・拡張性:新しいインターフェースにも対応可能
-
- ・実装依存:メーカーのXML定義により機能差がある
- ・学習コスト:GenICam APIの理解が必要
- ・一部古い規格(IIDCなど)とは非互換
1. 概要
2. 特長
3. メリット
4. デメリット
② IIDC/IIDC2
-
- ・IEEE1394カメラにおけるカメラコントロールレジスタ配置を定義
- ・IIDC2はその後継規格として幅広いインターフェースに適用できる規格として新たに制定された
-
- ・カメラの機能(露光、ゲイン、トリガなど)を抽象化し、同じAPIで制御可能
- ・XMLベースのカメラ機能記述(Feature Description File)
- ・ソフトウェア開発者はインターフェースに依存せず開発できる
-
- ・容易な実装と使い易さ
- ・カメラコントロールレジスタのアクセス性
- ・ベンダ固有機能への拡張性
- ・全てのカメラに対する共通の制御方式
- ・多種インターフェースヘの対応
-
- ・帯域不足:IEEE1394カメラで見た場合、高解像度・高fpsには不向き
- ・規格継承数減:過去の資産を残す場合のみ使用されることが多い
1. 概要
2. 特長
3. メリット
4. デメリット
各種インターフェースの比較
| 規格名 | Camera Link | USB3 Vision | GigE Vision | CoaXPress |
|---|---|---|---|---|
| 接続方式 | 専用ケーブル (LVDS) |
USB 3.0/3.1/3.2 (汎用) |
イーサネット (RJ45) |
同軸ケーブル (BNC) |
| データ伝送形式 | パラレル (LVDS) |
シリアル (USB) |
シリアル (TCP/IP) |
シリアル (CXP) |
| 画像データ転送速度 | 最大 6.8Gbps (Full Configuration) |
最大 5Gbps |
最大 1Gbps カテゴリによる |
最大50Gbps (CXP-12 Quad) 最大4レーンまで拡張 |
| ケーブル長 | 最大 10m |
最大 5m (規定なし) |
最大100m (Cat5e/6a) |
最大 50m (CXP規格) |
| 給電容量 | 最大 8W (PoCL対応) |
最大 4.5W (USB給電) |
最大 25W (PoE / 別電源) |
最大 78W (PoCXP対応) |
| フレームグラバの必要性 | 必要 | 不要 | 不要 | 必要 |
【参考】その他のカメラ用インターフェース(民生・放送・監視等)
-
- ・PC接続やデータ転送に広く使用
-
- ・外部モニタへの映像出力
-
- ・ワイヤレス転送、スマホ連携用
-
- ・ストレージメディアとして標準
-
- ・放送用インターフェースとして標準
-
- ・アナログ信号でHD画質(720p、1080p、最大4K)を伝送できる
主に監視カメラやセキュリティ用途で使用
同軸ケーブルを利用し、従来のアナログ配線を流用可能
- ・アナログ信号でHD画質(720p、1080p、最大4K)を伝送できる
1. USB(USB 2.0 / 3.0 / USB-C)
2. HDMI
3. Wi-Fi / Bluetooth
4. SDカード / CFカード
5. SDI / HD-SDI
6. アナログHD(Analog High Definition)
(東芝テリー株式会社製)
※ Camera Link、Camera Link HS、USB3 Vision、GigE Visionならびにロゴは、A3(Association for Advancing Automation)の商標です。
CoaXPress、IIDCまたはIIDC2ならびにロゴは、JIIA(日本インダストリアルイメージング協会)の登録商標です。
GenICamならびにロゴは、EMVA(European Machine Vision Association)の商標です。
Etnernetならびにイーサネットは、富士フイルムビジネスイノベーション株式会社の登録商標です。
その他、本資料に記載の会社名、団体名、製品名、規格名等の名称は、各社各団体における商標または登録商標の場合があります。