AI・ロボティクス時代の“目”を学ぶ
~ゼロからわかる!産業カメラ入門~
⑤ レンズの基本
産業用カメラで使われるレンズには「撮影レンズ」や「照明レンズ」などがありますが、本書では「マシンビジョン用撮影レンズ」に焦点を当てて解説します。
この章では、適切なレンズ選定の考え方について理解します。
レンズの種類
産業用カメラで使用される「マシンビジョン用撮影レンズ」には、設置方法や環境、レンズ構造の違いにより、さまざまな種類や呼び方が存在します。
単焦点レンズと可変焦点レンズ
カメラを設置した後に、撮影する範囲(視野・画角)を変更出来ないレンズを「単焦点レンズ」または「固定焦点レンズ」、変更出来るレンズを「可変焦点レンズ」と呼びます。
単焦点レンズは構造がシンプルで設計が容易なため、高性能かつ廉価な製品にできます。
可変焦点レンズには、用途に応じて「ズームレンズ」と「バリフォーカルレンズ」があります。
出典:興和オプトロニクス(株)
https://optical.kowa-opt.co.jp/lens/products/
マクロレンズ、接写レンズ
被写体を大きく撮影するため、近距離撮影に対応したレンズを「マクロレンズ」または「接写レンズ」と呼びます。
マシンビジョンでは近接撮影が多いため、市販されるマシンビジョン用レンズの多くはマクロレンズに分類されます。
特殊レンズ
マシンビジョンでは、用途に応じて特殊な機能を持つレンズが使用されます。
■ 同軸落射照明対応レンズ
- ・撮影レンズの光路内に照明を組み込み、レンズ前玉を介して被写体を照明するとともに、同一の光路で撮像を行うレンズです。
■ テレセントリックレンズ
- ・被写体との距離が変化しても像の大きさが変化しない特性を持ち、計測用途に適したレンズです。
出典:(株)ミュートロン
https://www.myutron.com/lens/fa/
■ 赤外線用レンズ、デイナイトレンズ
- ・目に見えない赤外線で撮影できるレンズです。
- ・可視光と赤外光の両方を使用する場合は、波長差によるピントずれを抑えた「デイナイトレンズ」と呼ばれるレンズが適しています。
レンズの用語解説
焦点・ピント・フォーカス
例えば虫眼鏡で太陽光を集めるように、凸レンズでは遠方からレンズに光が入ると一点に光が集まります。この光が集まる点を「焦点」といいます。
撮影レンズでは、星のような無限遠にある点光源からくる「平行光束」がレンズに入射して集まる点を「焦点」といいます。
「ピント」は「焦点」を指しますが、「ピントが合っている」「ピントがぼけている」など、撮影画像のぼけ具合を表す意味でも用いられます。
「フォーカス」は「焦点」を意味するほか、「ピント」の意味でも用いられます。
焦点距離
星などの無限遠にある被写体を撮影したとき、レンズの中心からピントの合っているイメージセンサまでの距離を「焦点距離」と呼びます。
「焦点距離」は視野や画角を決定するため、レンズ仕様を示す上で最も重要な項目です。
画角
撮影できる角度を「画角」と呼び、撮影レンズは「画角」により大きく3種類に分類されます。
■ 標準レンズ
-
- ・肉眼に近い範囲が写せるレンズのことです。
- ・一般に標準レンズと呼ばれるものの画角は約45~60°程度です。
■ 広角レンズ
-
- ・標準レンズよりも広い範囲を写せる(画角が広い)レンズのことです。
- ・近い撮影距離で広い範囲を撮影するときに使用しますが、標準レンズに対して被写体が小さく写ります。
- ・画角が広い「超広角レンズ」は「魚眼レンズ」ともいい、180°程度のものが多く使われます。車載用レンズだと200°程度のものも使われます。
■ 望遠レンズ
-
- ・標準レンズより狭い範囲を写せる、画角の狭いレンズのことです。
- ・同じ撮影距離でより拡大したり、遠くのものを大きく写したりするときに使用します。
絞り・F値(Fナンバー)
撮影レンズには、「絞り」と呼ばれる部分があり、結像される像の質を決める重要な役割があります。
- 絞りが大きいと光量を沢山取り込むことができ、小さくすると少なくできます。光量が多いとより高速で撮影できます。
- 像のぼけ方なども絞りの位置や大きさで変化します。
「F値」あるいは「Fナンバー」は、撮影レンズで集光される像の明るさを示す指標として使われ、レンズ仕様を示すのに重要な項目です。
- 「F値」は「焦点距離」と「絞りの大きさ」の比で求められます。
- 「F値」はF1.4、F2、F2.8、F4……のように示され、値が小さいほど明るいレンズとなります。
絞りは明るさだけではなく、ピントの合う範囲を示す「被写界深度」も調整できます。絞ることでピントの合う範囲は広くなります。
(傾斜面にある目盛を撮影)
レンズマウント
撮影レンズをカメラに取り付ける部分を「レンズマウント」や「マウント」といいます。
マウント構造により、カメラに各種撮影レンズを使用することができます。ただし、機構および光学的な互換性がない場合は使用できません。
マシンビジョン用カメラでは、「Cマウント」と呼ばれるマウント方式が主流です。一方で、使用する撮像センサのサイズに応じてさまざまなマウント規格も採用されており、レンズ選定が複雑化しています。
マシンビジョン業界では、互換性向上を目的とした国際標準化も進められています。
出典:(一社)日本インダストリアルイメージング協会(JIIA)
https://jiia.org/
レンズの構造
撮影レンズは、ガラスなどで構成された複数の単レンズを、「鏡筒」または「鏡胴」と呼ばれる機構部品で保持することで構成されています。
各レンズの構成や配置によって、光の屈折や収束状態を調整し、「収差」と呼ばれる歪みや色ずれを最小限に抑えるよう設計されています。
出典:エドモンド・オプティクス・ジャパン(株)
https://www.edmundoptics.jp/knowledge-center/application-notes/imaging/ruggedization-of-imaging-lenses/
周辺機器
マシンビジョンでは、用途に適した画像を取得し、使いやすさを向上させるため、撮影レンズに周辺機器を組み合わせて使用することがあります。
接写リング
撮影距離が短い接写撮影では、レンズのピント調整範囲を超える場合があります。その際は、適切な厚さや長さの接写リングを使用することでピントを合わせることができます。
マウント変換アダプタ
カメラと撮影レンズとを固定する「レンズマウント」が異なる場合に使用されます。
ND フィルタ
撮影レンズの絞りや露光時間を調整しても、像が明るすぎる場合に使用される光学フィルターです。
バンドパスフィルタ
特定の波長を選択して撮影する際に使用される光学フィルターです。
テストチャート
撮影の準備では、目的に応じてさまざまな図票が使用されます。
ピント確認には、「ジーメンス・スターチャート」が一般的に用いられます。
参考資料
東芝テリーのWebサイトには、技術情報として「レンズ/光学系」に関する資料を掲載しています。
「光学用語」や「レンズ選定方法」の解説のほか、各種技術資料も掲載していますので、ご興味のある方はぜひご覧ください。