東芝テリー株式会社

技術情報

レンズ/光学系

知っておきたい撮影レンズの基礎 ~ カタログ用語編 ~

はじめに

マシンビジョン用撮影レンズについては、主に“Cマウントレンズ”としてレンズメーカー各社から販売されています。各メーカーの製品カタログには、専門用語や光学技術に関する解説が示されているものも多いのですが、各社で使用している用語や定義が異なったり、一昔前の情報を更新せずに使用していたりするなど、利用者にとって解りづらいものであることは否めません。またインターネットにある国内外の各種レンズ情報も、趣味としての写真撮影の延長で作られていることから光学的に間違っていると思われるものが多々存在し、業務での利用に際しては解釈に誤解を生むことが多いものと感じています。

本書はマシンビジョン用カメラユーザの方々に、撮影レンズを使用する際に必要な“レンズカタログに記載されている用語の基礎”を知って戴くために作成したものです。本来ならば、これらの用語の定義からきちんとご説明する必要があるとは思いますが、これらは他の専門書やインターネット情報に譲り(……もちろん光学的にも正しく記載されているものは沢山あります)、通常得にくい実務的な情報を含めて解説していく方針で作成しました。皆様の光学知識向上の一助になれば幸いです。

1. レンズタイプ

1.1. 画角による分類

ここではカメラが写し込める範囲を示す“画角”によるレンズタイプについて解説します。“画角”の詳細については“ 2. 光学用語 ”を参照してください。

標準レンズ(standard lens)

一般のレンズ交換式カメラでは“標準レンズ”や”広角レンズ”など様々な種類のレンズが用意されています。
“標準レンズ”の定義としては“肉眼に近い範囲が写せるレンズ”など様々なものがありますが、“焦点距離が撮像センサの対角線長程度のレンズのことをいう”、と憶えて間違いはありません。
例えばイメージサイズが1/2型のカメラ(対角8 mm)ならばf=8 mm程度、2/3型カメラ(対角11 mm)ならばf=11 mm程度が標準レンズに相当し、この場合の画角は約53°となります。なお一般に標準レンズと呼ばれるものの画角は約45~60°程度が多いです。

標準レンズ(standard lens)

広角レンズ(wide-angle lens)

標準レンズよりも広い範囲を写せる(画角が広い)レンズを“広角レンズ”といい、マシンビジョンでは近い撮影距離で広い範囲を撮影するときに使用します。同じ撮像センサならば焦点距離の短いレンズ(短焦点レンズ)のほうが広角になります。
ピントの合う範囲が広い(被写界深度が深い)写真が撮りやすく、一般には風景写真などで多用されます。

広角レンズ(wide-angle lens)

望遠レンズ(telephoto lens)

標準レンズより狭い範囲を写せる(画角が狭い)レンズを“望遠レンズ”といい、マシンビジョンでは同じ撮影距離でより拡大したり遠くのものを大きく写したりするときに使用します。同じ撮像センサならば焦点距離の長いレンズ(長焦点レンズ)のほうが望遠になります。
望遠レンズの場合、ピントの合う範囲は狭く(被写界深度が浅く)なります。

望遠レンズ(telephoto lens)

魚眼レンズ(fish-eye lens)

広角レンズのうち画角が少なくとも140°以上に広い“超広角レンズ”を“魚眼レンズ”ともいい、180°程度のものが多く使われます。車載用レンズだと200°程度のものも使われます。

魚眼レンズ(fishfish-eye lens)

固定焦点レンズ(fixed-focus lens)

焦点調整機構が無いレンズのことを“固定焦点レンズ”といいます。
また焦点距離を変えることができない“単焦点レンズ”のことをいう場合もあります。焦点距離を変えることができる“バリフォーカルレンズ”や“ズームレンズ”に比べ、比較的設計が容易で構造もシンプルなため、高性能、且つ廉価な製品にできます。

マクロレンズ 、接写レンズ(macro lens、micro lens)

被写体を大きく写すため、近接で撮影できるレンズを”マクロレンズ”や”接写レンズ”といいます。また伝統的に”マイクロレンズ”と呼んでいるメーカーもあります 1
近い被写体を撮影できるようピント合わせ範囲が広いものや、撮影距離が固定のものがあります。またマシンビジョン用途では、撮影距離(ワーキングディスタンス)が一定で光学倍率が異なるレンズをシリーズ化したものもあります。
なお“近接撮影”のことをクローズアップ(close-up)ともいいます。

1  “マイクロレンズ”という用語は、撮像センサの“オンチップレンズ”にも使用されます。

バリフォーカルレンズ(variable-focal-length lens、vari-focal lens)

画角を連続的に変化できるレンズの一種として“バリフォーカルレンズ”があります。
“ズームレンズ”と異なり、画角を変える都度ピントを合わせ直す必要がありますので、設置後(画角設定後)は固定焦点レンズと同様の使い方となります。
ズームレンズに対し、比較的小形、且つ廉価にできるため、監視用途によく使用されます。

ズームレンズ(zoom lens)

画角を連続的に変化できるレンズの一種として“ズームレンズ”があります。
“バリフォーカルレンズ”と異なり、画角を変えてもピントの位置は変わりませんので、設置後も連続的な画角・光学倍率変更が可能です。
なおカメラのフランジバックがずれていると、ズーム時にピントがずれてしまいますので、使用の際はレンズかカメラに“フランジバック調整機構”が必要と考えたほうが良いです。

1.2. 特殊性能を持つレンズ

テレセントリックレンズ(telecentric lens)

レンズの絞り中心を通る光線(主光線)が、光軸と平行になっている状態を”テレセントリック”といいます。
“テレセントリックレンズ”はレンズに入射、あるいはレンズから射出される主光線がテレセントリック(本項では以下”テレセン”と呼びます)なレンズのことで、“物側テレセン”、“像側テレセン”、及び“両側テレセン”のレンズがあります。
“物側テレセン”と“両側テレセン”のレンズは“画角が0°”という特殊なレンズで、“被写体との距離が変化しても光学倍率が変わらない”という計測用途に適した特性を持っています(被写界深度の範囲を超えるとピンぼけは起こします)。なお“画角が0°”ですから一般の撮影レンズのように撮影距離で光学倍率を変えることはできません。また原理上、被写体の大きさ以上のレンズ有効径が必要ですので、広い範囲を写すなど光学倍率が小さい場合はレンズの鏡筒や前玉が必然的に大きくなり、結果的に価格も比較的高価となります。
レンズを通して照明を行う“同軸落射照明”を使用する場合は、一般的に物側、または両側テレセンレンズが必要となります。

テレセントリックレンズ(telecentric lens)

高解像度レンズ(high resolution lens)、メガピクセルレンズ(mega-pixels lens)

“高解像度レンズ”は、画素ピッチの細かい“高精細カメラ”用として製作されたレンズです。100万画素を超える高解像度カメラ用として使用されるため“メガピクセルレンズ”とも呼ばれます。
イメージサイズが1/2型(対角8 mm)のカメラの場合、対応する画素ピッチは下記のようになります。2

  • VGA用レンズ: 約10 μm
  • 1.3M対応レンズ: 約4.9 μm
  • 2M対応レンズ: 約3.9 μm
  • 5M対応レンズ: 約2.5 μm
  • 10M対応レンズ: 約1.8 μm
  • 2  日本インダストリアルイメージング協会技術報告書 “JIIA LER-005-2010: 撮像素子の画素数と画素ピッチ”による。

同軸落射照明対応レンズ(in-line illumination lens)

“同軸落射照明”は、撮影レンズの光路内に照明を組込み、レンズ前玉を経て被写体を照明し、また同じレンズで撮影する照明法で、金属面など光沢のある面の検査などに使用されます。
レンズには“物側、または両側テレセントリックレンズ”が使用され、ハーフミラーの付いた鏡筒に照明用ライトガイド(光ファイバー)やLEDを差し込む構造のものが一般的です。

3CCDカメラ用レンズ(3-CCD lens)

“3CCDカメラ用レンズ”は、色分解プリズム(色分解のための厚いガラスブロック)で被写体の色を赤・緑・青(RGB)の各色に分け、3個の撮像センサを用いて高精細に撮影できる“3板カメラ”(“3 CCDカメラ”ともいう)に対して光学性能を最適化したレンズです。
3板カメラに一般的な単板用レンズを使用した場合、3板カメラの特長である高精細画質に対して性能を生かしきれなくなります。

昼夜兼用レンズ、デイナイトレンズ(day & night lens)

通常のレンズでは“可視光”の範囲のみを扱うよう光学設計されているため、赤外光(赤外線)を撮影すると可視光時に対して結像位置が長くなり、ピンぼけが生じます。
“昼夜兼用レンズ”、“デイナイトレンズ”は主に監視カメラ用として、昼間照明用(自然光を含む)の可視光と夜間照明用の赤外光とでピント位置がずれないよう設計されたレンズです。

ビルトインレンズ(built-in lens)

“ビルトインレンズ”は、主に監視用として使用される一体型カメラ用レンズです。
カメラの用途に合わせ、各種制御などのカスタマイズができます。

防振機能付レンズ(image stabilized lens)

“防振機能付レンズ”は、設置場所などの揺れによる像振れ防止機能付レンズです。
主に監視用途で使用され、特に焦点距離の長い望遠レンズにおいて効果があります。

2. 光学用語

2.1. 結像状態について

焦点(focal point)、ピント、フォーカス(focus)

例えば虫眼鏡で太陽光を集めるように、凸レンズでは遠方からレンズに光が入ると一点に光が集まります。この光が集まる点を“焦点”といいます。
撮影レンズの場合では、光軸上の無限遠にある点光源からくる“平行光束”がレンズに入射して集まる点を“焦点”といいます。一枚のレンズに対し焦点は物体(被写体)側と像側に存在し、それぞれ“物体側焦点”、“像側焦点”といいます(下図では像側焦点を示します)。
“ピント”は“焦点”のことですが、“ピントが合っている”、“ピントがぼけている”など、撮影画像の“ぼけ”具合のことにも使います。また “フォーカス”は“焦点”のほか、“ピント”の意味でも使用されます。

焦点(focal point)、ピント、フォーカス(focus)

平行光(parallel light(rays)、collimated rays、telecentric rays)

ある点に集まったり、発散したりしない光束のことを“平行光”といいます。例えば星など無限遠にある点光源からの光束が平行光です。
よく光軸に平行な光線を平行光と呼ぶことがありますが、複数の星を撮影する場合などは、必ずしも光軸に平行な光線ではなく、星から光軸に斜めに(角度を持って)入射する平行光束も存在しますので、光軸に平行という意味ではありません。3
平行光を作るには、凸レンズの焦点の位置に光源、あるいは物体を置くと、レンズの反対側からは平行光となって射出されます。このとき光源が光軸上の点光源ならば光軸に平行の光束が射出されますし、面光源ならば、ある角度を持った平行な光束も射出されます。この平行光を“コリメート光”と呼び、またこの光学配置の装置を“コリメーター”と呼びます。光学では、焦点距離などの定義に“無限遠からの光線を基準”にすることが多く、この光束を作る場合にコリメーターを使用します。
光軸に平行という意味での平行光に対しては“テレセントリック”という用語が適しています。撮影レンズとしては“ テレセントリックレンズ ”というものがありますのでそちらの項目を参照してください。
なおマシンビジョン用LED照明などでも平行光という用語を使用していますが、本来の平行光とは違う使い方も見受けられますので注意が必要です。

平行光(parallel light(rays)、collimated rays、telecentric rays)
3  双眼鏡で星空を観察した場合、星の大きさは大きくならず目視と同じく点に見えます。このようなものが無限遠にある点光源です。

ぼけ(bokeh)

撮影レンズは物体(被写体)を像として結ぶ働きをしますが、この時“点を点として結像させる”必要があります。しかし実際の撮影レンズでは、ピントを合わせた位置からある範囲しかピントが合わず(ピントが合う範囲を”被写界深度”という)、それ以外は“ぼけ”た画像になります。また撮影レンズの設計、あるいは製造上の理由でぼけた画像になることもあります。
写真では、人物の背景をぼかすなど意図的に“ぼけ”を利用しますが、これは“被写界深度”をコントロールして撮影します。日本ではぼけ具合を“ぼけ味”とよび芸術的視点で扱っていますが、この様子は収差のまとめ方などレンズ設計により異なるもので、写真愛好家にはレンズの個性として捉えられています。ちなみに英語の”bokeh”は日本語が語源で、近年になって海外でも“ぼけ味”が評価されるようになったことからそう呼ばれたようです。

ぼけ(bokeh)

撮影距離、被写体距離(OD: object distance)、ワーキングディスタンス、作動距離(WD: working distance)

撮影レンズと被写体との距離を“撮影距離”や“被写体距離”といいます。特に撮影レンズ先端(鏡筒先端、あるいはレンズ第一面の被写体に近い方)から被写体の距離を“ワーキングディスタンス”、あるいは“作動距離”といいます。
一般撮影用レンズは数メートル離れた撮影距離に対して最適な光学設計を行いますが、マシンビジョン用レンズでは比較的近い距離に対し最適化しているものが多いようです。

撮影距離、被写体距離(OD: object distance)、ワーキングディスタンス、作動距離(WD: working distance)

視野、被写体範囲、撮影範囲、画界(FoV: field of view)

カメラが写し込める範囲を“視野”といいます。“被写体範囲”や“撮影範囲”、“画界”とも呼ばれます。“長さ”で表示するため有限距離の場合のみに使用され、撮影距離が無限遠のときは角度で示す”画角”を用います。
撮像センサの“イメージサイズ”やレンズの“焦点距離”、“撮影距離”の違いにより視野は変わります。

視野、被写体範囲、撮影範囲、画界(FoV: field of view)

画角(AoV: angle of view)

カメラが写し込める範囲を角度で示したものを“画角”、画角の半分を“半画角”といいます。また画面水平方向(H方向)の画角を“水平画角”、垂直方向(V方向)を“垂直画角”といいます。
撮像センサの“イメージサイズ”やレンズの“焦点距離”、“撮影距離”の違いにより画角は変わります。撮影距離が無限遠の場合が最も広く、近づくにつれ狭くなります。このためレンズカタログでは無限遠の時の画角を表示することが一般的ですが、マシンビジョン用レンズでは、角度で示す“画角”よりも被写体の大きさを示す“視野”の方が必要とされます。
画角により“標準レンズ”や“広角レンズ”、“望遠レンズ”などレンズタイプが決まり、それに応じたレンズ構成で光学設計が行われます。

収差(aberration)

理想的な撮影レンズは“物体の一点から出たあらゆる光線は一点に結像する”、“平面の物体が平面に結像する”、“物体と像が相似関係になる”というものです。しかしながら実際には”光の振る舞い”や”各光学素子の配置”、”硝材(光学ガラス)の特性”などによって、像が一点にまとまらず“ぼけ”が生じたり、平面が彎曲して結像したり、形が歪んだりします。この理想レンズと実際のレンズとの誤差のことを“収差”と呼びます。
基本的な“収差”には”ザイデルの5収差”と呼ばれるものと“色収差”があります。“ザイデルの5収差”には“球面収差”、“コマ収差”、“非点収差”、“像面彎曲”、及び“歪曲”があります。
光学設計作業では、これらの収差を目標値以下に低減するために、“レンズ枚数”や“絞りの位置”などによる“光学構成”の選定や各レンズの“使用硝材”や“形状”などの組み合わせの最適化を行っています。

収差(aberration)

https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Spherical_aberration_2.svg
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Lens-coma.svg
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Astigmatism.svg
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Field_curvature.svg
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Mustache_distortion.svg
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Chromatic_aberration_convex.svg

2.2. レンズ用語

焦点距離(focal length)

レンズの“焦点距離”とは、“レンズによる結像の基準になる点”と“光軸上の無限遠にある点光源からくる平行光の焦点”との距離をいい、レンズ固有の値で変化しません。
“レンズによる結像の基準になる点”とは“レンズの中心と見做せる点”を意味し(仮に“ごく薄い厚さの凸レンズ”(“薄肉レンズ”という)があるとした場合はレンズの位置になります)ここを“主点”といいます。(“主点”の詳細については“2.5 レンズの主要点について”を参照してください。)
焦点距離は視野や画角などを決めるため、レンズ仕様を示すのに最も重要な項目であり、一般に小文字の”f”と書き表します。

焦点距離(focal length)

絞り(stop、aperture stop)

撮影レンズには、レンズに入る光を調整するための“孔”をもつ部品があります。この“孔”、あるいは“孔の開いた部品”を“絞り”といいます。基本的には丸い孔形状の絞りが良いのですが、孔の大きさを可変するための構造から六角形など多角形の孔の絞りもあります。
絞りにはレンズにより結像される像の質を決める重要な役割があります。たとえば絞りが大きいと光量を沢山取り込むことができ、小さくすると少なくできます。また像のぼけ方なども絞りの位置や大きさで変化します。
レンズによる結像において絞りの中心を通る光線を特に“主光線”とよびますが、最も絞り込んだ時の光束としてそのレンズの基本的な結像状態を示すことから、その画角での基準光線となります。

アイリス、虹彩絞り(iris diaphragm)

“絞り”のうち、孔の大きさを光軸を中心として連続的に可変できる絞りのことを特に“アイリス”、あるいは“虹彩絞り”と呼んでいます。“アイリス”とは眼球の“虹彩”のことで、光の量を調整するのに都合の良い構造をしています。
アイリスは数枚の“絞り羽根”により構成されますが、絞り形状は円形に近い方が光学的に有利ですので、高性能を狙うレンズは絞り羽根の枚数が多くなっています。反対に低コストのレンズは絞り羽根が少なく、2枚や3枚のものもあります。

Fナンバー、F値(F-number)、口径比 (aperture ratio)

撮影レンズが光を取り込める量、または撮影レンズで集光される像の明るさを示す指標として“Fナンバー”、“F値”、あるいは“口径比”が使われます。これらは同じものを示しており、焦点距離と絞りの大きさの比で求められます。なおF値は焦点距離を示す小文字の“f”と区別するため、大文字の“F”で書き表されます。
この値が小さいほど“明るいレンズ”といいますが、これは光を沢山取り込めることからきています。反対に値が大きいレンズを“暗いレンズ”と呼びます。明るいレンズは、より速いシャッター速度や短い露光時間で撮影できますが、光学設計としては収差の補正が難しくなり、比較的高価なものとなります。
一般に、レンズの仕様は“焦点距離”と“最も明るいFナンバー”で示されますが、この“最も明るいFナンバー”のことを“開放Fナンバー” や“開放絞り”、”最大口径比”と呼びます。
一般的な撮影レンズでは、FナンバーはF1.4、F2、F2.8、F4、F5.6……のような√2の等比数列で示され、値が一段大きく(√2倍)なるごとに像の光量は1/2になります。“アイリス”タイプのレンズではFナンバーは絞りリング(絞り環)で調節することができ、光量を半分(1/2)にすることを“一絞り絞る”といいます。
絞りは明るさだけではなく“焦点深度”と呼ぶピントの合う範囲を調整することができ、絞るとピントの合う範囲が長く(深く)なります。しかし絞ることで“小絞りぼけ”と呼ばれる回折現象の影響が大きくなりますので、画素ピッチの小さいカメラでは解像度を生かすことができないため絞り過ぎには注意が必要です。

Tナンバー(T-number)

一般的な撮影レンズは、ガラス板を球面に加工した“単レンズ”を複数枚組合せて構成されていますが、各硝材(光学ガラス)はある程度光を吸収したり、レンズ表面で光を反射したりしてしまうため、“透過率”が100%の完全な透明ではありません。
“Fナンバー”はレンズが取り込める光の量(明るさ)を決める指標ですが、硝材の透過率を考慮していないことから、異なる撮影レンズでは同じFナンバーでも像の明るさが同じになるとは限りません。そのため映画用の撮影レンズなど露出に厳密な用途のレンズでは、像の明るさを明確にするため“Fナンバー”に“透過率”を考慮した“Tナンバー”で表示しているレンズもあります。

大口径(large-aperture)、大口径レンズ(large-aperture lens)

“Fナンバー”が小さく“明るいレンズ”のことを“大口径”、“大口径レンズ”といいます。
最近のコンシューマー用デジタルカメラでは、より大きな“ぼけ”を求めた大口径レンズが増えてきています。

近接撮影、クローズアップ(close-up)

被写体を大きく撮影するため近い距離(至近距離)から撮影することを“近接撮影”、あるいは“クローズアップ”といい、“マクロレンズ”などが用いられます。

波長(wave length)

空間を伝わる光の持つ周期的な長さのことを”波長”といいます。
“波長”は撮像センサの感度や撮像画像の質にも影響するため、マシンビジョンでは可視光のほか紫外光(紫外線)や赤外光(赤外線)も使用されます。

可視光(visible light)

ヒトの眼で見える波長範囲の光を“可視光”といいます。“可視光”の範囲は明確ではなく、およそ400~760 nm程度といわれています。
可視光域の光は波長により虹色に分離して見えますが、波長が短い側がスミレ色(菫色)で、長くなるにつれて青色、緑色、黄色、橙色、赤色に見えます。

可視光(visible light)

紫外線(UV: ultraviolet)、近紫外線(near-ultraviolet)

波長域がおよそ400 nm以下で軟X線までの光を“紫外線”といいます。“紫外線”のうち可視光に近い側の波長のものを”近紫外線”といい、およそ200~400 nmの波長域が該当します。
照明光として“近紫外線”を用いることにより、可視光よりも高精細な画像撮影ができ、また特定の被写体を蛍光させて観察するなどが可能となります。
一般的な硝材(光学ガラス)では、この“近紫外線”を吸収してしまうため透過率がかなり低くなります。そのため近紫外線用のレンズは”石英ガラス” や“蛍石”など特殊な硝材が使用されます。

赤外線(IR: infrared)、近赤外線(near-infrared)

波長域がおよそ760 nm以上の光を”赤外線”といいます。赤外線のうち可視光に近い側の波長のものを“近赤外線”といい、およそ760 nm~3 μmの波長域が該当します。
赤外光は目に見えないため照明光として監視カメラに使用されるほか、物質に対して可視光とは異なる透過特性を生かし、紙の裏側や絵画の下絵などの撮影などが可能となります。
一般に使用されるCCDやCMOSなどの固体撮像素子はSi(シリコン)からなる半導体によりできていますが、その特性上1100 nm(=1.1 μm)までしか光の感度が無く、それ以上の波長域で使用するにはInGaAs(インジウム・ガリウム・砒素)などでできた半導体が必要です。

硝材(glass)、光学ガラス(optical glass)

撮影レンズなどに使われるガラスのことを”硝材”、あるいは“光学ガラス”といいます。
撮影レンズなど光学用途に使われる”硝材”は窓ガラスに使用するガラスとは異なり、光学的、化学的、及び機械的特性が厳密に管理されており、その特性により“BK7”(近年は”N-BK7” 4 )などの名称が付けられています。硝材の種類(硝種)は光学ガラスメーカーごとに様々な特性のものが製作されており、よく使用されるものだけでも100種類以上あります。撮影レンズは目的の製品仕様を得るために、これらの硝種と個々のレンズ形状との組み合わせ等により設計されます。
なお窓ガラスなど一般的用途に使う硝材を“青板ガラス”、”白板ガラス”などといい、比較的ローコストなため光学的用途でもミラーやウインドウなどで使用されます。

2  BK7、N-BK7はSCHOTT AG社の光学ガラス名称である。
BK7は古くから知られた硝種であるが、近年は環境対応として無鉛無砒素のものをNタイプガラスとして明記している。

非球面(aspherical lens)

一般的なレンズは硝材(光学ガラス)を凸または凹状の“球面”、あるいは“平面”に研磨して製作します。
撮影レンズは画面全体で良い性能を得る必要がありますが、一枚の凸レンズだけだと光線の通過位置や波長により“収差”と呼ばれるずれが生じてしまいます。これを減らすために、一般的な撮影レンズは様々な形状や硝材からなる複数枚のレンズを組み合わせて設計されますが、まだ充分に補正が出来ないこともあります。
“非球面レンズ”は文字通り“球面ではない”レンズのことで、光軸対称に球面から少しずれた曲面で形成されています。
この非球面レンズを使うことで、設計の自由度が増し収差補正を向上することができることから、より高性能なレンズの設計やレンズの使用枚数を減らすことなどができます。

2.3. 撮像センサに係わるもの

イメージサイズ、センササイズ、画面サイズ(image size、image format)

撮像センサの受光面の大きさを“イメージサイズ”、“センササイズ”、あるいは“画面サイズ”などと呼びます。
エリアセンサの場合、イメージサイズは有効撮像画面の“対角寸法(単位:mm)”で示しますが、対角寸法による表示のほか、“型表示(単位:型、またはinch(") 5 )”が慣用的に使用されています 6 。一般的な産業用カメラでは、対角11 mm(2/3型)、対角8 mm(1/2型)、及び対角6 mm(1/3型)が多く使用されていますが、それ以外のイメージサイズの撮像センサも増えています。マシンビジョンで使用されるイメージサイズは、その寸法に応じ7階級からなる“イメージサイズ区分”として標準化されています 7
対応するレンズはカメラのイメージサイズ以上の“イメージサークル”を持つものが必要です。なおカメラによっては、同じ型表示でも撮像センサが一般的な値と異なるものや、撮像センサの“有効画素”ではなく“実効画素(映像出力画素)”範囲のみカメラから出力し、撮像センサのイメージサイズとカメラの実際のイメージサイズ(実効イメージサイズ)とが異なるものがあるため、特に光学精度が必要な用途には注意が必要です。

イメージサイズ、センササイズ、画面サイズ(image size、image format)
5  “インチ(inch)”はSI単位ではなく、国内では計量法により商取引に使用できませんが、そもそもイメージサイズの表示で使用している“インチ”は換算定数がヤード・ポンド法の値(1 inch=25.4 mm)とは異なるものであり誤解の元です。 6  型表示の換算定数については日本インダストリアルイメージング協会指針 “JIIA LER-001-2008: FA/MV用レンズ仕様項目指針”が参考になる。この指針で示される“一般的な換算定数例”は次の通りである。
(1)対角8 mm以上のセンサ:16 mm/型、(2)対角8 mm未満のセンサ:18 mm/型
7  日本インダストリアルイメージング協会技術規格 “JIIA LE-001-2013: マシンビジョンカメラ用レンズマウント―イメージサイズ区分”

イメージサークル、有効像円(image circle)

通常、撮影レンズからは円形範囲に像が結像されますが、この範囲内で光学的性能が確保できる像円の直径を“イメージサークル”、あるいは“有効像円”といいます
レンズに対応するカメラはイメージサークル以下の“イメージサイズ”となりますが、仮にイメージサイズが大きい場合は、画面隅に充分光が到達せず暗くなってしまう“蹴られ”という現象や“ピンぼけ”など光学的不具合が生じます。

画素ピッチ(pixel pitch)、画素寸法(pixel size)

撮像センサの画素間隔のことを“画素ピッチ”、または“画素寸法”といいます。
“画素ピッチ”の大きさは、レンズの光学性能のひとつである“解像力”や、“被写界深度”を求める際に用いる“許容錯乱円径”などの光学性能に影響を与えます。

像高(image height)

光軸からの像の大きさを”像高”と表記し“ぞうこう”、あるいは“ぞうだか”と呼びます。
例えば対角8 mm型のカメラを使用する場合、画面最周辺角部の“像高”は4 mmとなります。
レンズ性能を評価する際の像高を示す用語として“中心”と“周辺”があります。“中心”とは本来“光軸”の位置ですが、実際のテストチャートによる測定では通常“光軸近傍”を意味します。また“周辺”とは“光軸から離れた位置”の像高をいいますが、写真用レンズやCCTV、監視用途では7割像高(画面隅の像高の7割の位置)が多いようです。これに対し高精細なマシンビジョン用途では画面全体を同様に処理することが理想的と考え、10割像高(画面隅)での評価を推奨いたします 8 。

8  日本インダストリアルイメージング協会技術報告書 “JIIA LER-007-2012: 高精細カメラ用レンズの推奨仕様”が参考になる。

分解能(resolution)、解像力(resolving power)

少し離れた2点が分離して見える最も近い限界を”分解能”といいます。
撮影レンズではこの“分解能”を1 mmあたり何組の白黒縞パターンが入るかを意味する“解像力”として表すことが多く、単位として”本/mm”や“lp/mm”(ラインペア・パー・ミリと読む)、“cycles/mm”が使われる“空間周波数”と呼ばれる値で示すことが一般的です。また撮影レンズの解像力は伝統的に、粗いものから細かい順に ……10, 12.5, 16, 20, 25, 32, 40, 50, 63, 80, 100, 125, 160, 200, 250……(本/mm)のステップである“標準数R10数列 9 ”で表示されることが多いです。
なお“解像力”は撮像センサやモニターで使用される”解像度”とは異なりますので注意が必要です。

分解能(resolution)、解像力(resolving power)
分解能(resolution)、解像力(resolving power)
9  日本工業規格 “JIS Z 8601:1954 標準数“

2.4. 光学性能について

コントラスト(contrast)

画像の暗い部分から明るい部分までの明暗の差を”コントラスト”といいます。例えば黒が0、白が255という輝度が明確に分かれている白黒縞チャートを被写体として撮影した場合、撮影レンズにより結像された像は、程度の差はありますが、収差により白黒エッジ部が鈍ってしまいグレーのグラデーション状になります。この場合、本来の輝度レベルは確保できず、黒50、白205などと明暗の差が減少することになります。

MTF(modulation transfer function)

撮影レンズの性能を示す指標として”MTF”があります。
“MTF”は“変調伝達関数特性”のことで、“空間周波数”が変化した際にレンズがそのコントラストをどの程度再現できるかを示すものです。
従来撮影レンズの分解能を示すために“解像力”が使われてきましたが、近年は“MTF特性”を利用することが多くなってきました。本来は解像力とMTFとは単純に換算できないものですが、“MTFでのコントラスト比が20%以上あれば解像している”と判断されています。 10

MTF(modulation transfer function)
10  日本インダストリアルイメージング協会技術報告書 “JIIA LER-007-2012: 高精細カメラ用レンズの推奨仕様”が参考になる。
この報告書では“レンズの解像力とMTFの関係については、レンズメーカー各社ごとに独自の判断基準があることや、センサのMTFなどにより明確に決めることは困難であることは承知したうえで、ここでは撮影レンズ単体において、“解像=MTF20%”とした。”とある。

歪曲、ディストーション(distortion)

“歪曲”は“ザイデルの5収差”のうちのひとつで、物体と像との形が同じ(相似形)にならないという収差です。例えば長方形の被写体が樽形や糸巻形に歪む現象です。(“2.1 収差”を参照)
歪曲は“画角の3乗に比例する”という特性を持つため、画角の大きい“広角レンズ”に顕著に表れます。この場合は周辺ほど縮む(光学倍率が小さくなる)ため樽型歪曲となります。反対に周辺ほど伸びる(光学倍率が大きくなる)場合は糸巻型歪曲となります。
歪曲はレンズタイプ(レンズ構成、各レンズの配置方法)に因るところが大きいので絞っても改善しません。近年は画像処理技術により歪曲を補正することが増えてきました。

周辺光量(quantity of marginal light)、周辺光量比(relative illumination)

“周辺光量”とは文字通り画面周辺部の光量のことをいいますが、通常は画面中央部との差を示す“周辺光量比(relative illumination)”のことをいいます。
一般的な撮影レンズの特性として、画面中央部に対し周辺部の明るさが低下する傾向があり、これを“周辺光量落ち”などといいます。
この“周辺光量落ち”の原因としては、“コサイン4乗則”といわれる斜めから入った光の像が暗くなる現象、及び“口径蝕”といわれる鏡筒内レンズ周縁部での蹴られに起因するものがあります。
なお撮影レンズに起因するものでは無く、“撮像センサへの入射角度”により周辺光量が低下する現象も有りますが、この場合は撮像センサに対応した“射出瞳位置”を持つレンズを使用することで改善されます。

焦点深度(depth of focus)

撮影レンズは、物体を像として結ぶ働きをしますが、この時“点を点として結像させる”必要があります。直感的にピントの合う点は一点であり、そこから離れるにつれ”ぼけ”が大きくなることが想像できると思います。しかし実際のカメラシステムでは、光軸に沿った奥行き方向でみると、ピントの合う範囲は一点ではなく、ピントがぼけていないと見做せるある程度の幅があり、これを“焦点深度”といいます。
“焦点深度”はレンズのFナンバーと撮像センサの画素ピッチとで決まるもので、Fナンバーが小さい(明るい)レンズ、あるいは画素ピッチの小さいセンサほど焦点深度の幅は狭くなります。

被写界深度(DoF: depth of field)

“焦点深度”はカメラ内部の撮像センサ近傍でのものですが、被写体側にもピントがぼけていないと見做せるある程度の幅があり、これを“被写界深度”といいます。
“被写界深度”内にあるものは“ぼけずにピントが合って見える”ため、奥行きのある被写体を撮影する際には深度を有効に活用できます。
“被写界深度”は“焦点深度”同様にFナンバーと撮像センサの画素ピッチとで決まりますが、さらに光学倍率も関係します。Fナンバーが小さい(明るい)レンズ、画素ピッチの小さいセンサ、及び光学倍率が大きい(拡大)ほど被写界深度の幅は狭くなります。なお被写界深度の幅が狭いことを“深度が浅い”、幅が広いことを“深度が深い”といいます。
“被写界深度”は計算で求められますが、一般に使用される“許容錯乱円径”を用いた計算式では“点がぼけない範囲”、すなわち最も浅い深度が算出されます。実際の使用においては、被写体の形状や要求分解能、目視や画像処理など利用方法に応じた“許容できるぼけ量”があるので計算値よりも若干大きくなると考えられます。

許容錯乱円径(CoC: circle of confusion)

“焦点深度”、あるいは“被写界深度”を算出する際に使用するパラメーターとして“許容錯乱円径”があります。ここでいう“錯乱円”とは、レンズにより点が結像された際の円形の像のことですが、撮像センサがぼけとして認識できない最小の大きさを特に“許容錯乱円径”といいます。
“許容錯乱円径”は撮像センサの“画素ピッチ”、あるいは“エアリーディスク径”といわれるレンズの光学的な結像限界で決まり、“画素ピッチ”、あるいは“エアリーディスク径”の大きい方が“許容錯乱円径”になります。 11

11  日本インダストリアルイメージング協会技術報告書 “JIIA LER-006-2010: 焦点深度のパラメーター”による。

2.5. レンズの主要点について

主点(principal point)、主平面(principal plane)

“主点”とは“レンズの中心と見做せる点”を意味し、仮に“ごく薄い厚さの凸レンズ”(“薄肉レンズ”という)があるとした場合はそのレンズの位置になります。実際の撮影レンズでは一枚レンズのものでも少なからず厚みを持ちますし、光学性能を向上するため複数枚のレンズを組み合わせてひとつの撮影レンズとして構成しており、薄肉レンズとはいえない厚いレンズとなります。これらの厚いレンズではレンズの中心位置を決めることができないため、無限遠からの平行光束を入射させ、あたかも薄肉レンズがあるように作用する点を主点とします。一般のレンズでは、光を通過できる方向が前後の二方向あるため、主点は二箇所存在します。撮影レンズの物体側から平行光を入れた場合の主点を“像側主点”、または“第二主点”、像側から平行光を入れた場合の主点を“物体側主点”、または“第一主点”といい、この二つの主点の間隔を“主点間隔”といいます。
また各主点を通って光軸に垂直な平面を“主平面”といい、主点と同様に“物体側主平面”と“像側主平面”があります。
“主点”は撮影レンズによる物体と像との関係を示すのに重要なものであり、次の性質があります。

  • 光軸に平行に“物体側主平面”に入射した光は、“像側主平面”の同じ高さから“像側焦点”に向かって射出される。
  • “物体側主点”に向かって入射した光線は、“像側主点”から同じ角度で射出される。

この性質を用いることで、物体と像の関係を作図で求めることができます。

主点(principal point)、主平面(principal plane)

繰出し量(-)

無限遠にある被写体を撮影した場合、主点から焦点距離だけ離れた位置(像側焦点位置)に像が形成されます。被写体までの距離が有限の場合は、像側焦点位置に対し幾らか離れた位置に像ができます。この像の位置の差を“繰出し量”といいます。(対応する英単語は不明です……日本独自の用語でしょうか?)
一般的なカメラは、無限遠の被写体を撮影できるように繰出し量が0である像側焦点位置に撮像センサの撮像面を配置します。この状態で有限距離の被写体を撮影すると“繰出し量“だけ像が離れるためピントがぼけてしまいますが、”繰出し量“分だけレンズを前に出すか撮像センサを下げるかすることでピントを合わせることができます。ピント調整が可能な撮影レンズでは、フォーカスリング(距離環)を動かすことによりこの繰出し量分だけ像の位置を動かし、撮像面と合致させることができます。またレンズのピント調整範囲外の場合やピント調整ができないレンズでは、繰出し量に相当する厚さ・長さの”接写リング“をレンズとカメラの間に挿入することでピントを合わせることができます。

倍率(magnification)、光学倍率(optical magnification)

物体と像の大きさの比を“倍率”といい、実物の何倍の大きさの像ができるかを示します。電子的な大きさの変換である“電子倍率”に対して、レンズによる場合を特に“光学倍率”ということもあります。
同じ大きさに撮影するときは“等倍”、あるいは“1倍”といいます。また拡大する場合は“2倍”など1以上の値を、縮小する場合は“0.5倍”など1未満の値となります。

全長(total track)

光学的には、一番物体側のレンズの第1面頂点から像側焦点までの距離を“全長”といいます。
レンズメーカーによっては鏡筒を含んだ長さを“全長”として示しているものもあるようです。

光路長(optical path length)

光学的には、屈折率nの媒質中を光路に沿って距離dだけ光が進行するとき、その積ndを“光路長”、または“光学距離”といいます。
レンズメーカーによっては一番物体側のレンズの第1面から像側焦点までの距離(“全長”)を“光路長”として示しているものもあるようです。

入射瞳(entrance pupil)、射出瞳(exit pupil)

“絞り”より前側にあるレンズにより作られる絞りの像(虚像)のことを“入射瞳”といいます。
物体のある一点から出た光線は四方八方に拡がりますが、その物体の一点を頂点とし“入射瞳”を底とする円錐状の光線束のみが結像に有効な光線となります。したがって“入射瞳”はレンズ系内に入射する光線束を決定する役目があります。
また“絞り”より後ろ側にあるレンズにより作られる絞りの像(虚像)のことを“射出瞳”といいます。
物体の一点より“入射瞳”に向かった光線は、レンズや実際の絞りを通過し、“射出瞳”を底とした円錐状の光線束となって結像します。したがって“射出瞳”はレンズから像面に至る光線束を決定する役目があります。
使用する撮影レンズの“入射瞳の位置”や“入射瞳の径”、及び“射出瞳の位置”や“射出瞳の径”のデータが判ると“光線の通り道”が判るので、物体側ではハウジング窓の大きさや不要光除去のための遮光板設計などに、像側ではカメラ筐体内設計や撮像センサの斜入射光特性に適したレンズ選定に活用できます。

入射瞳(entrance pupil)、射出瞳(exit pupil)

バックフォーカス(back focal distance、back focus)

撮影レンズの最も撮像センサ側のレンズ最終面頂点から像側焦点の位置までの距離を“バックフォーカス”といいます。
レンズとセンサの間に光学フィルタなどを挿入する場合には、充分な間隔があるか注意が必要です。

バックフォーカス(back focal distance、back focus)

フランジバック(flange focal distance)

レンズをカメラに取付ける“マウント”の取付け基準面(フランジ)から撮像センサの撮像面までの距離を“フランジバック”といいます。
レンズ交換式カメラでは、この“フランジバック”が決まっているとレンズ交換時の光学調整が不要になるため、殆どのマウントではフランジバックが規格化されています。

フランジバック(flange focal distance)
12  日本インダストリアルイメージング協会技術規格 “JIIA LE-004-2011: TFL マウント・TFL-II マウント規格 及び 運用規定”

2.6. 機構について

フォーカス機構(focusing mechanism)、メカ繰出し量(stroke of focusing lens)

一般的なカメラは、無限遠の被写体を撮影できるように“繰出し量”が0である位置に撮像センサの撮像面を配置します。この状態で有限距離の被写体を撮影すると繰出し量だけ像が離れるためピントがぼけてしまいますが、ピント調整が可能な撮影レンズでは、フォーカスリング(距離環)を動かすことによりこの繰出し量分だけ像の位置を動かし、撮像面と合致させることができます。
一般の撮影レンズでは、フォーカスリングを動かすことでレンズ全体、あるいは一部分のレンズ群を前後させる”フォーカス機構“を持ちますが、レンズが動くため、主点や焦点、瞳位置などのレンズの主要点が動くことになります。そこでピント合わせのためにレンズが動く量を“メカ繰出し量”として示しているレンズメーカーもあります。
なおフォーカスリングを回転させて前後させる機構を“ヘリコイド”といいます。ヘリコイドにはレンズ自体がリングと共回りする“回転ヘリコイド”と回転しない“直進ヘリコイド”があります。

フォーカス範囲

ピントを合わせることのできる撮影距離を“フォーカス範囲”といいます。
一般的な撮影レンズでは、“最至近距離”から“無限遠”までの範囲ですが、近接撮影用レンズではごく僅かの範囲しかピント調整できないものもあります。

最至近距離、至近距離、MOD(minimum object distance)

撮影レンズを通常の使用方法で使用した時に、最も近づける撮影距離を”最至近距離”、あるいは単に“至近距離”といいます。英語からくる“MOD”という用語もよく用いられます。
撮影レンズの“最至近距離”は、撮影に必要な“繰出し量”だけ移動量が必要となるレンズ鏡筒(特にヘリコイド部)の機構的制約により決まるものです。一般に、レンズとカメラの間に“接写リング”を挿入することで更に至近距離で撮影することができます。

絞り範囲(aperture range)

その撮影レンズで使用可能な“Fナンバー”の範囲を“絞り範囲”といいます。
Fナンバーが小さい値が”最大口径比”あるいは“開放絞り”で、最も明るい絞り値を示します。反対に大きい値は“小絞り”側のFナンバーとなりますが、絞りが完全に閉じる(close)するものもあります。

フォーカスロック機構 (focus lock mechanism)

ピントが動かないように固定する機構を“フォーカスロック機構”といいます。
フォーカスリング(距離環)を“ロックレバー”(つまみねじ)、または“ロックねじ”(小ねじ)で固定するタイプが主流です。

アイリスロック機構(focus lock mechanism)

アイリス(虹彩絞り)タイプのレンズでFナンバーが動かないように固定する機構を“アイリスロック機構”といいます。
絞りリング(絞り環)を“ロックレバー”(つまみねじ)、または“ロックねじ”(小ねじ)で固定するタイプが主流です。

オートフォーカス(AF: autofocus)

ピント調整を、センサ・制御系・モーターなどを利用して自動的に合わせるシステムのことを“オートフォーカス”といいます。
“オートフォーカス”の方式としては、撮像センサで捉えた画像を用いる“パッシブ方式”と、赤外線式など外部のセンサを用いる“アクティブ方式”に大別されます。

マウント(mount)、レンズマウント(lens mount)

撮影レンズをカメラに取り付ける部分を“マウント”や“レンズマウント”といいます。また“カメラマウント”ともいわれます 13 。また機械的結合部の意味で“メカニカルインターフェース”(mechanical interface)ということもあります。
マウント構造を採用することで、カメラに対し各種撮影レンズを使用することができますが、機構、及び光学的互換性がないとそのまま使用することができません。例えば、マウントの構造としては“スクリュー式”、“フランジ式”、“バヨネット式”、及び“中継リング式”などがありますし、光学的には“イメージサークル”と“イメージサイズ”や、“フランジバック”の整合が必要です。(“Sマウント 14 ”などフランジバックが決まっていないマウントもあります。)
現在、マシンビジョン用カメラでは伝統的に“Cマウント”と呼ばれるマウントが主流となっていますが、使用する撮像センサのイメージサイズに対し、様々なマウントが採用されています。その中でイメージサイズに応じた推奨マウントが提案され、国際的な標準化が図られています 15

13  一般に”カメラマウント”という用語は、装置など何らかの物にカメラを取付けるための部品を指す。 14  イメージサイズ区分“クラス II”(対角4~8 mm)用マウントで、詳細仕様は下記による。
日本インダストリアルイメージング協会規格 “JIIA LE-005-2012: Sマウント規格 及び 運用規定”
15  日本インダストリアルイメージング協会指針 “JIIA LER-004-2010: 各イメージサイズ区分に対する推奨のメカニカルインターフェース”が参考になる。

フィルタサイズ(filter size)

撮影レンズの中には、レンズ前面に“NDフィルタ”などの光学フィルタを取付けるための“フィルタねじ” 16 付きのものがあり、“フィルタサイズ”として示しています。

16  日本工業規格”JIS B7111:1997 写真レンズ―付属品取付部の形状及び寸法(127 mm以下)”のねじ式取付けのもの。

マウント回転調整(mount rotation mechanism)

“Cマウント”など“スクリュー式マウント”の場合、ねじの切り口(切始め)位置がばらつく、あるいは決められていないため、固定した際に撮影レンズの距離やFナンバーを示す“指標”が見づらい位置になることがあります。これを解消するため“マウント回転調整”機構がついたレンズもあります。

2.7. 周辺機器

接写リング(extension ring、extension tube)

光学倍率の大きい画像を得るために撮影距離が短い接写撮影を行う際、レンズのフォーカス範囲外の場合やピント調整ができないレンズでは“繰出し量”に相当する厚さ・長さの“接写リング”を使用することでピントを合わせることができます。
なお“接写リング”を使用した場合は、レンズの光学性能を充分に発揮できない場合があります。

エクステンダー(extenderextender)、リアコンバーターレンズ (rear converter lens)

“エクステンダー”、または“リアコンバーターレンズ”は、撮影レンズのマウント側に取り付けることで焦点距離を長くできるレンズです。
なお“エクステンダー”、“リアコンバーターレンズ”を使用した場合は、レンズの光学性能を充分に発揮できない場合があります。

リバースリング(reverse ring)

“リバースリング”は拡大撮影の際に、撮影レンズを通常と逆向き(リバース)に取り付けるためのリングです。
一般的な撮影レンズは光学倍率が等倍より小さい縮小光学系となっています。拡大撮影を行う場合は”接写リング“を使用することが多いのですが、撮影レンズが縮小光学系として設計されているため、倍率が高くなるほど光学性能が低下します。
そこで光学倍率が等倍以上の撮影では、撮影レンズを逆向きに取り付け、物体と像とを入れ替えて拡大光学系とすることで、光学的に有利な使い方ができます。例えば0.5倍の縮小光学系レンズは、リバースで使用することで0.5の逆数である2倍(=1/0.5)の拡大光学系となります。

マウント変換アダプタ(mount adapter)

カメラと撮影レンズとでマウントが異なる場合は、通常は使用することはできませんが、“マウント変換アダプタ”により使用できる場合があります。
マシンビジョンではFマウント 17 をTFL-IIマウント 118 やCマウントに変換するものなどがあります。

17  株式会社ニコンの35mm一眼レフカメラ用マウントでマシンビジョンでは一般的なマウントである。 18  イメージサイズ区分“クラス III”(対角16~31.5 mm)用マウントで、詳細仕様は下記による。
日本インダストリアルイメージング協会規格 “JIIA LE-004-2011: TFLマウント・TFL-IIマウント規格 及び 運用規定”

ND フィルタ (ND filter、neutral density filter)

色のバランス(色温度)を変えずに光の量を調整するフィルタを”NDフィルタ”といいます。
撮影レンズの絞りや露光時間(シャッター速度)を調整しても、像が明るすぎる場合に使用します。
素材として硝子製のものやフィルム状のものが市販されており、減衰量として光量を一絞り分暗くする“ND2”、二絞り分暗くする“ND4”、三絞り分暗くする“ND8”が一般的です。
また細かい調整が必要な用途では“光学濃度(optical density)”を示す“OD値”で示したNDフィルタも使われます。