技術情報
レンズ/光学系
知っておきたい撮影レンズの基礎 ~レンズ選定編~
はじめに
マシンビジョン用カメラを有効に活用するには、目的に合ったカメラと撮影レンズを選択する必要があります。マシンビジョン用のカメラはUSB3 Vision™ やGigE Vision®、Camera Link®1などの様々なインターフェースや撮像センサによる機種のラインアップがあり、また一般的には“Cマウント”に代表されるマウント構造となっているため、用途に応じたレンズを使用できます。
撮影レンズの選定については、カメラやレンズメーカーの製品カタログに解説されているものもありますが、中には一般的な写真撮影用レンズの選定方法のみが示され、マシンビジョン用撮影レンズの選定、及び使用方法にはそぐわない結果となるものがあると感じています。
本書はマシンビジョン用カメラユーザーの方々に、撮影レンズを使用する際に必要な“撮影レンズ選定の基礎”を知って戴くために作成したものです。できるだけ具体例を挙げ、通常得にくい実務的な情報を含めて解説していく方針で作成しました。皆様の光学知識向上の一助になれば幸いです。
1. 撮影レンズによる結像
撮影レンズは、被写体(物体)を撮影するために、撮像センサ上に縮小、あるいは拡大して像を結ぶ“結像”機能があります。
マシンビジョンでは、使用目的に合ったカメラと撮影レンズを選択する必要がありますが、その選定には“結像”について理解しておく必要があります。
1.1. 結像とは
“結像”とは、撮影レンズを通して“被写体(物体)を像として結ぶ”ことをいいます。
物体のある一点から出た光線は四方八方に拡がりますが、その一点を頂点とした円錐状の光線束が撮影レンズ内で屈折、あるいは反射し、円錐状に集光された光線束となって像として結ばれます。また別の一点、さらにもう一点、さらに……の各点の像が集まることで被写体の形が形成されます。
1.2. レンズの主要点
撮影レンズの選定においては先ず結像関係を検討しますが、そのためには“レンズの主要点”についての情報が必要です。
“レンズの主要点”とは次の点のことをいいます2。
- 物点
- 像点
- 焦点(物体側焦点、像側焦点)
- 主点(物体側主点(第一主点)、像側主点(第二主点))
一般の撮影レンズでは、光を通過できる方向が物体側からと像側からとの二方向あるため、“焦点”と“主点”は各々二箇所存在します。レンズの物体側から平行光を入れた場合の主点を“像側主点”または“第二主点”、像側から平行光を入れた場合の主点を“物体側主点”または“第一主点”といい、この二つの主点の間隔を“主点間隔”といいます。また各主点を通って光軸に垂直な平面を“主平面”といい、主点と同様に“物体側主平面”と“像側主平面”があります。
1.3. 光の進む方向と各値の符号
一般に光学では“光は左から右”に伝播するものと考えます。よって光路を図示する場合などは、ある基準から“右側を正(+)”、”左側を負(-)”とします。また光軸に対し“上側を正(+)”、“下側を負(-)”とします。
1.4. 物像関係の作図
“主点”は撮影レンズによる物体と像との関係を示すのに重要なものであり、次の性質があります。
- 光軸と平行に“物体側主平面”に入射した光は、“像側主平面”の同じ高さから“像側焦点”に向かって射出される。
- “物体側主点”に向かって入射した光線は、“像側主点”から同じ角度で射出される。
この性質を用いることで、物体と像の関係を作図で求めることができます。
なおこの主点の性質から“主点間”は光軸方向の長さにしか影響しないことから、粗検討の際は “主点間隔”を省略し、下図のように物体側主点・主平面と像側主点・主平面とを重ねた状態で図示することが一般的です。
1.5. 結像公式
撮影レンズの結像関係を示す公式としては、次に示す二種類があります。なお各記号、及び符号は前項の物像関係図に示したものを用いています2。
① ガウスの結像公式
② ニュートンの結像公式
一般には①に示す“ガウスの結像公式”が知られていますが、マシンビジョン用途では、使い勝手や接写リングを使用する用途との相性が良いことから②の“ニュートンの結像公式”の使用をお薦めします。
“光学倍率M”4、“視野FoV”、及び “画角AoV”は次の式で求めます。
③ 光学倍率M
“光学倍率M”の符号が負(-)の時は倒立像を示しています。
④ 視野FoV
ここで“像の大きさB”には撮像素子のイメージサイズの半値(符号は負(-)5)を代入します。
⑤ 画角AoV
④と同様に“像の大きさB”には撮像素子のイメージサイズの半値(符号は負(-))を代入します。
また被写体が無限遠の場合は、“繰出し量x’=0”となります。
また当社総合カタログでは便宜上簡易的な式で示していますので、符号については本資料と異なっています。4 ここでの光学倍率M は、光学的には横倍率β のことを示しています。このほかに縦倍率α、角倍率γ がありますが、ここでの説明は割愛します。5 像の大きさの負号も倒立像であることを示します。
2. 結像関係の計算例とレンズの選定
ここでは“一般的な撮影”,“近接撮影(縮小撮影)”,及び“近接撮影(拡大撮影)”について,前項の結像公式により,結像関係の計算例と用途に応じた撮影レンズの選定方法について説明いたします。
2.1. 一般的な撮影
(1) 被写体が無限遠にある場合の画角と視野
撮影用途において、一般に“無限遠”とはレンズを繰出さなくとも(x’=0)ピントが合う距離のことをいいますが、ここでは視野の大きさを容易に測定できないほど大きく映る撮影距離といたします。
例題(1)
当社製カメラBU130CF 相当の撮像センサが付いたマルチコプター形無人航空機(いわゆるドローン)を使用したときに撮影できる“画角”はどのくらいか?
カメラ・撮影レンズの仕様
(1) イメージサイズ: 対角6 mm(1/3 型)
(2) 画素数: 1.3M ピクセル(1280(H)×960(V))
正方格子配列
(3) 焦点距離: 4 mm
(4) F ナンバー: F2
計算例(1)
画角AoV の計算式については“ 1.5. 結像公式 ”に示しましたが、改めて物像関係の図と計算式を示します。
ここでは撮影距離が無限遠のため“繰出し量x’ =0”となります。これは撮像面の位置と撮影レンズの焦点の位置が一致していることを意味しています。もしレンズとカメラとのフランジバックが焦点深度以上にずれていると、繰出し過ぎ、あるいは繰り込み過ぎの状態と同じで、無限遠の画像がピンぼけとなってしまいます。
像の大きさを示す像高Bはイメージサイズから求めます。
今回使用するカメラはイメージサイズの対角寸法と水平(H)及び垂直(V)方向の画素数が明記されていますので、先ずは対角(D)方向の画角を求め、次に水平、垂直の順で計算することにいたします。
(1) 対角(D)方向画角
対角方向の像高BD はイメージサイズ 6 mmの半分の値(符号は負(-)とします)ですから
よって対角画角AoVD は
となります。
(2) 水平(H)、垂直(V)方向画角
次にセンササイズの縦横の像高を画素数より求めます。
この撮像センサは1画素の寸法の縦横比が等しい正方格子配列のため、垂直方向の画素数NVが960 画素、水平方向の画素数NH が1280 画素であることから、対角方向の画素数ND は
となります。
各方向のイメージサイズの比(アスペクト比)は
ですので、垂直方向の像高BV、及び水平方向の像高BH は、対角方向の像高BD よりこの比を用いて求められます。
よって垂直画角AoVV、及び水平画角AoVH は
となります。
(2) 被写体が有限距離にある場合
例題(2)
例題(1)のドローンを使用して、10 m の高さから真下を撮影する場合の視野はどのくらいか?
計算例(2)
この場合は被写体が有限距離にありますので、画角だけではなく視野も求めることができます。
但し、あくまでも理想的な条件での概算であり、実際の大きさは歪曲など収差の影響や、被写体に対するカメラの設置角度ずれによる変形(キーストン歪6など)がありますので注意が必要です。
(1) 撮影距離x による方法
視野FoV の計算式については画角同様に“ 1.5. 結像公式 ”に示しましたが、ここでは撮影距離が判っていますのでこれを用いた式を使用します。
この式を使用する場合は撮影距離x にどの値を用いるかが問題となります。本来、x は物体側焦点から被写体までの距離を示していますが、本例題では”10 m の高さ”となっており、何処を基準としているのかが明確ではありません。このことはx≒a とするかx=a-f とするかの違いですが、このような場合は撮影レンズの焦点距離と撮影距離とのバランスで考え、先ずは次のように判断し概算値として求めます。
- 撮影距離が焦点距離に対し十分に大きい場合は、設問にある撮影距離をそのままx とします。
- 撮影距離が焦点距離に対し近い場合は、設問にある撮影距離から焦点距離を引いた値をx とします。
この場合は焦点距離f が4 mmに対し、撮影距離が10 m(=10000 mm)ですので前者を採用し、x=-10000 mmとします(x の符号は負(-)をとります)。
よって垂直視野FoVV、及び水平視野FoVH は
となります。
(2) 画角による方法
視野は画角より求めることもできます。
画角AoV の式は
ですが、例題では撮影距離が有限のため繰出し量x’ を求める必要があります。
繰出し量x’ の計算については “1.5. 結像公式”にニュートンの結像公式として示しましたものを用います。ニュートンの結像公式は
ですので、繰出し量x’ を求める式は
となります。例題では焦点距離f が4 mm、撮影距離x が10 m ですので
となります7。
これを用いて垂直画角AoVV、水平画角AoVH を求めます。
画角AoV から視野FoV を求める式は
で示されます。よって、垂直視野FoVV、水平視野FoVH は
となります8。
2.2. 近接撮影(縮小撮影)
“ 2.1. 一般的な撮影 ”の項では、主に風景撮影や監視用途で使用する比較的遠方の被写体に対する計算方法を示しましたが、ここではFA やマシンビジョン用途で使われる撮影距離が近い場合についての計算方法をご説明します。
例題(3)
当社製カメラDU657Mを使用してハンドリングロボットの開発を進めている。視野が125 mm角、撮影距離が300 mm 程度の場合、適した撮影レンズの焦点距離はどのくらいか?
カメラの仕様
(1) イメージサイズ: 対角18.1 mm(1.1 型)
(2) 画素数: 6.5Mピクセル(2560(H)×2560(V))
(3) 撮像面積: 12.8(H)×12.8(V) mm
(4) 画素サイズ: 5.0(H)×5.0(V) μm
計算例(3)
使用するカメラと視野が明確な場合は、先ず必要な光学倍率M を求めてからレンズの選定を行います。
(1) 光学倍率
光学倍率M は下式のとおり被写体の大きさA と像の大きさB の比で求められます。
例題では撮像面、視野ともに縦横比(アスペクト比)が1:1 の正方形ですので、像と被写体の大きさとして水平方向あるいは垂直方向のどちらを使っても同じ光学倍率となりますが、ここでは垂直方向(V 方向)の値を用いることにします。よって
となります。ここで像の大きさB は負の符号(-)を取りますので、光学倍率Mの符号も負(-)となり、倒立像であることを示しています。また本例題は縮小撮影ですので、光学倍率の絶対値が1 以下となります。
(2) 焦点距離
次に撮影レンズの焦点距離f を求めますが、撮影距離と光学倍率Mが判っていますので、光学倍率M の式を変形して焦点距離f を求めます。
より
計算例(2)と同様に、ここでも撮影距離とx との関係が不明確ですが、現段階では使用するレンズが決まっておりませんから焦点距離f も判りませんので、撮影距離をx としx=-300 mm とします。
よって
となります。
市販のCマウントレンズですと、f=25 mm かf=35 mm が一般的にありますので、これらから選ぶことにします。
(3) イメージサークル
ここで使用するカメラ(DU657M)のイメージサイズは対角18.1 mm(1.1 型)です。本カメラのマウントはCマウントですが、一般にCマウントは対角16 mm(1 型)以下のイメージサイズに適しており9、市販されているCマウントレンズの殆どがΦ16 mm 以下のイメージサークルのものです。
仮にカメラのイメージサイズより撮影レンズのイメージサークルが小さい場合は下記のようになります。
- 光学倍率については撮影レンズの焦点距離と撮影距離で決まりますので、基本的には影響ありません。
- 画面隅に充分光が到達しないため、 “蹴られ”と呼ばれる周囲が暗くなる現象や“ピンぼけ”など、(レンズメーカーの考える仕様に対して)光学的な不具合が生じます。
よって、基本的にはカメラのイメージサイズ以上のイメージサークルを持つ撮影レンズから選択することになります。本例題の場合では、最近は1.1 型や”フォーサーズ(4/3 型)”のイメージサークルを持つマシンビジョン用撮影レンズが増えていますので、そちらから選ぶことをお薦めします。
なお、特に焦点距離が長めの撮影レンズの場合では、イメージサークルに余裕があり、レンズの仕様以上のイメージサイズのカメラにも使用できることがありますので、実機にて確認してみるのも手です10。
因みにカメラのイメージサイズより大きいイメージサークルを持つレンズを使用する場合は、視野や光学倍率は変わりませんが、有効像円の中央寄り部分を使用することになりますので、画面周辺部も光量落ちや解像力の低下の少ない、比較的良い光学性能が得られます。
(4) 撮影距離
これまでに、暫定的ですが撮影レンズの焦点距離が決まりましたので、物体側焦点から被写体までの距離であるx が求まります。
焦点距離を求めた式を変形すると
よって、f=25 mm のときの撮影距離x25 とf=35 mm のときの撮影距離x35 は
となります。
(5) 繰出し量
今までの計算で、物体側主点からを被写体までの距離を構成するf 及びx が確定しましたので、次に撮像センサ側の距離を構成する繰出し量x’ を求めます。
x’ を求める式は、x を求めたときと同様に光学倍率M の式を変形します。
より
f=25 mm のときの撮影距離x’25 とf=35 mm のときの撮影距離x’35 は
となります。
この繰出し量x’ は、ピント調整する際に必要な像の移動量を示しており、ピント調整が可能な撮影レンズでは“フォーカスリング(距離環)”をこの量だけ、ピント調整が出来ないレンズではこの厚さの“接写リング”をレンズとカメラとの間に挿入することで、像の位置を撮像面まで動かしピントを合わせることができます。
2.3. 近接撮影(拡大撮影)
“ 2.2. 近接撮影(縮小撮影) ”の項では、光学倍率の絶対値が1 より小さい縮小撮影の場合の計算方法を示しましたが、ここではルーペ11や顕微鏡のように拡大して撮影する場合についての計算方法をご説明します。
例題(4)
当社製カメラBU406MCF を使用して外観検査装置の開発を進めている。視野が5 mm 角の場合、適した撮影レンズはどのようなものか?
カメラの仕様
(1) イメージサイズ: 対角15.9 mm(1 型)
(2) 画素数: 4M ピクセル(2048(H)×2048(V))
(3) 撮像面積: 11.26(H)×11.26(V) mm
(4) 画素サイズ: 5.5(H)×5.5(V) μm
計算例(4)
使用するカメラと視野が明確な場合は、先ず必要な光学倍率M を求めてからレンズの選定を行います。
(1) 光学倍率
例題では撮像面、視野ともに縦横比(アスペクト比)が1:1 の正方形ですので、例題(3)と同様の方法で光学倍率を求めます。
この場合、像と被写体の大きさとして水平方向あるいは垂直方向のどちらを使っても同じ光学倍率M となりますが、ここでは垂直方向(V 方向)の値を用いることにします。よって
となります。ここで像の大きさB は負の符号(-)を取りますので、光学倍率Mの符号も負(-)となり、倒立像であることを示しています。また本例題は拡大撮影ですので、光学倍率の絶対値が1 以上となります。
マシンビジョン用レンズとしては、切の良い光学倍率のものが入手しやすいので、ここでは仮にM=-2 とします。この場合は像の大きさは5 mm 角の2 倍の10 mm 角となり、撮像センサの周囲に若干余裕ができます。
(2) 画素分解能
撮像センサの一画素あたりの視野の大きさのことを“画素分解能”といい、これにより用途に応じたカメラの画素数(解像度)を求めることができます。
本例題において、光学倍率M=-2 のレンズを使用する場合の垂直視野FoVV は
となります12。
なお本カメラの画素は縦横比が1:1 の正方格子配列ですので、水平方向の画素分解能RH も同じとなります。
(3) マクロレンズ
本例題に対しては、光学倍率M=-2 倍の撮影レンズを使用すればよいことが判りました。
マシンビジョン用レンズとしては、拡大撮影や接写に特化した“マクロレンズ”とよばれる撮影レンズが市販されています。
マクロレンズには、ワーキングディスタンスが一定で各種光学倍率がシリーズ化されているもののほか、高解像度カメラ用やテレセントリックレンズもありますので、用途に応じたレンズを選定できます。
(4) 顕微鏡対物レンズ
拡大撮影では、光学倍率によっては顕微鏡の対物レンズを使用することもできます。
顕微鏡対物レンズは、対応する顕微鏡形式により“有限補正光学系”と“無限遠補正光学系”に大別され、“有限補正光学系”は一般のレンズ同様にそれ単体で結像することができますが、“無限遠補正光学系”は“結像レンズ”や“チューブレンズ”とよばれる補助レンズを必要とします。
顕微鏡対物レンズにカメラを取付けるには、カメラと同じマウントを持つ既定の長さの鏡筒が必要です。
(5) 一般的な撮影レンズでの使用
例題(1)~(3)で使用してきたような一般的な撮影レンズ(汎用レンズ)で拡大撮影を行う場合は、撮影距離(WD)がレンズの最至近距離(MOD)よりも近いことになることが多いため、繰出し量x’ に相当する長さの“接写リング”が必要です。
仮に焦点距離f=25 mm のCマウントレンズで光学倍率M=-2 倍としたとき、繰出し量x’ は
となりますので、50 mm の長さの接写リング(チューブ)が必要です。
なお一般的な撮影レンズは光学倍率が等倍より小さい縮小光学系として設計されているため、倍率が高くなるほど光学性能が低下します。そこで光学倍率が等倍以上の撮影では、撮影レンズを逆向き(リバース)に取り付け、物体と像とを入れ替えて拡大光学系とすることで、光学的に有利な使い方ができます。例えば0.5 倍の縮小光学系レンズは、リバースで使用する13ことで0.5 の逆数である2倍(=1/0.5)の拡大光学系となります。
3. 被写界深度について
3.1. 被写界深度
撮影レンズは、物体を像として結ぶ働きをしますが、この時“点を点として結像させる”必要があります。直感的にピントの合う点は一点であり、そこから離れるにつれ”ぼけ”が大きくなることが想像できると思います。しかし実際のカメラシステムでは、光軸に沿った奥行き方向でみると、ピントの合う範囲は一点ではなく、被写体の前後でピントがぼけていないと見做せるある程度の幅があり、これを“被写界深度”といいます。
“被写界深度”内にあるものは“ぼけずにピントが合って見える”ため、奥行きのある被写体を撮影する際には深度を有効に活用できます。
3.2. 許容錯乱円径
“被写界深度”を算出する際に使用するパラメーターとして“許容錯乱円径”があります。ここでいう“錯乱円”とは、レンズにより点が結像された際の円形の像のことですが、撮像センサがぼけとして認識できない最小の大きさを特に“許容錯乱円径”といいます。“許容錯乱円径”は撮像センサの“画素ピッチ”、あるいは“エアリーディスク径”といわれるレンズの光学的な結像限界で決まり、“画素ピッチ”、あるいは“エアリーディスク径”の大きい方が“許容錯乱円径”になります14。
画素ピッチ
撮像センサの画素間隔のことを“画素ピッチ”、または“画素寸法”、“画素サイズ”といいます。
当社の総合カタログでは“画素サイズ”として示していますが、カタログに明記していないカメラメーカーもありますので、この場合は“イメージサイズ”と“解像度”より求めますが、代表的なイメージサイズ、及び解像度における画素ピッチについては“
4.1. カメラの解像度と画素ピッチ
”の項で説明いたします。
エアリーディスク
光には波の性質があり、理想的なレンズでも絞りにより回折してしまうため、焦点は一点にはならずある大きさの明るい円盤状となります。この円盤を”エアリーディスク”といいます。
エアリーディスクの径DAiry は、光の波長λ とF ナンバーF(正確には光学倍率を加味した“実効F ナンバーFeff”)から次式により求められます15。
この式によると、実効F ナンバーFeff が大きくなるとエアリーディスク径も大きくなり、点像がぼけることが判ります。この現象を“小絞りぼけ”といいます。例えば実効F ナンバーFeff がF4 のとき、波長λ が550 nm でのエアリーディスク径は5.36 μmとなります。これは画素ピッチが4 μmの撮像センサにF4 のレンズを使用することはカメラの高精細性能を生かし切れないことを意味しています。
3.3. 被写界深度の公式
“被写界深度”は撮影レンズの”F ナンバー”と撮像センサの”画素ピッチ”、及び“光学倍率”で決まります。
マシンビジョンで使用する一般的な撮影距離の場合、被写界深度DoF は次の式で求められます。
この式によると、F ナンバーが小さい(明るい)レンズ、画素ピッチの小さいセンサ、及び光学倍率が大きい(拡大)ほど被写界深度の幅は狭くなります。なお“焦点深度”と“ニュートンの結像公式”を使っても被写界深度を求めることができます16。
4. カメラの解像度とレンズ性能
4.1. カメラの解像度と画素ピッチ
マシンビジョン用カメラは、各種インターフェースごとに様々なイメージサイズや解像度の機種をラインアップしています。このため同じ解像度のカメラでもイメージサイズが異なる場合があるなど、使用する撮影レンズに必要とされる解像力が異なることになりますが、ユーザーとメーカー、あるいは個々人の間においてレンズの解像力等の仕様表記や表現に対し誤解が生じることがあります。
ここでは参考として、対角11 mm 型(2/3 型)と対角8 mm(1/2 型)の撮像センサにおける、各解像度での画素ピッチ(μm/pixel)を示します17。
なお本画素ピッチは撮像面のアスペクト比を“H:V=4:3”とし、総画素より計算にて求めたものです。
各解像度における画素ピッチ(参考値)
(単位:μm/pixels)
| 解像度 | 対角11 mm 型 | 対角8 mm 型 |
|---|---|---|
| 300K | 13.8 | 10.0 |
| 400K | 12.1 | 8.8 |
| 480K | 11.0 | 8.0 |
| 800K | 8.6 | 6.3 |
| 1M | 7.6 | 5.5 |
| 1.3M | 6.7 | 4.9 |
| 2M | 5.4 | 3.9 |
| 3M | 4.3 | 3.1 |
| 4M | 3.8 | 2.8 |
| 5M | 3.4 | 2.5 |
| 6M | 3.1 | 2.3 |
| 7M | 2.9 | 2.1 |
| 8M | 2.7 | 2.0 |
| 9M | 2.5 | 1.8 |
| 10M | 2.4 | 1.8 |
なお当社代表的カメラの画素ピッチを“ 5. 主なカメラの光学的仕様 ”の項に示しましたのでご活用ください。
4.2. 高解像度レンズ
特に画素ピッチの細かい“高精細カメラ”用として製作されたレンズとして“高解像度レンズ”があります。主に100 万画素を超える高解像度カメラ用として使用されるため“メガピクセルレンズ”とも呼ばれます。
各レンズの対応する画素ピッチは“
4.1. カメラの解像度と画素ピッチ
”の項で示したピッチ相当と思われますが、全ての撮影条件で性能を発揮できるとは限らず、ある特定条件での光学性能としている場合もあります18。
撮影レンズの光学性能を決める要因としては主に次のものがありますが、これらがレンズ設計時の条件に近いほど、より良い性能が得られます。
光学性能を決める要因(例)
- 波長(スペクトル分布)
- F ナンバー
- イメージサイズ
- 光学倍率
- 画角
- 撮影距離
- レンズと撮像センサ間の光学部品の光学特性、厚さ
- 光学ローパスフィルター(OLPF)
- 赤外線カットフィルター(IRCF)
- 撮像センサのカバーガラス
- 撮像センサのMTF
2M用レンズを5Mカメラに使用出来るのか?
例えば、従来2/3 型2Mカメラを使用していた外観検査装置に対して、同じイメージサイズの5Mカメラの使用を検討する場合、今まで使用してきた2M用高解像度レンズが使用できるのか?という疑問をお持ちになられる方も多いかと思います。
これに対する回答は……“ご利用になる条件で実機評価をお願いします”……と申し上げるのが適切かと考えます。その背景としては
-
波長従来の撮影レンズを使用するメリット(例)
- 使用実績があるため調達や品質面での安心感がある
- 光学的条件は同じで済むため、設置位置・方法の変更が不要
- 5M用レンズに比べコストが安い(高精細用になるほど高価になる傾向あり)
-
期待するところ
- 画質は変わらなくとも、従来の2Mカメラよりは高解像度の画像は得られる
- 従来のレンズの限界性能が判らないが、元々5Mにも使える高性能レンズかもしれない
-
懸念されるところ
- 画素ピッチが小さくなるので被写界深度が浅くなる
- 絞りを絞って(小絞りで)使用していたために、回折限界により5Mカメラの性能が発揮できない
- カメラの感度が低くなるため、より明るいレンズが必要となる
- 撮像センサの斜入射光感度特性19が変わり、撮影レンズの射出瞳位置が整合せずシェーディングが大きくなる
- 画面周辺部などで光学性能の粗が目立ちやすくなる
- 5M用レンズと比べると、やはり解像力やコントラストが不足し見劣りする
などが挙げられます。
一般論としては、より安定した画像処理を行うには高解像度カメラに対応したレンズの使用をお薦めしますが、使用条件次第では得られる結果が異なることも考えられますので、システムとしての最適化を図るうえでは照明系も含んだ実機によるご検討をお願いいたします。
5. 主なカメラの光学的仕様
5.1. BU / DU シリーズ
(1) 白黒カメラ
| BU030 | BU031 | BU080 | |
|---|---|---|---|
| 撮像デバイス | 1/3 型CCD (ICX424AL) |
1/2 型CCD (ICX414AL) |
1/3 型CCD (ICX204AL) |
| 解像度 | 640 (H) × 480 (V) | 1,024 (H) × 768(V) | |
| 画素数 | 0.3M | 0.8M | |
| 撮像面積 | 4.88 (H) × 3.66 (V) mm | 6.52 (H) × 4.89 (V) mm | 4.81 (H) × 3.62 (V) mm |
| 画素サイズ | 7.4 (H) × 7.4 (V) μm | 9.9 (H) × 9.9 (V) μm | 4.65 (H) × 4.65 (V) μm |
| BU130 | BU132M | BU205M | |
|---|---|---|---|
| 撮像デバイス | 1/3 型CCD (ICX445AL) |
1/1.8 型GS-CMOS (EV76C560) |
2/3 型GS-CMOS (CMV2000) |
| 解像度 | 1,280 (H) × 960 (V) | 1,280 (H) × 1,024 (V) | 2,048(H) × 1,088(V) |
| 画素数 | 1.3M | 1.3M | 2M |
| 撮像面積 | 4.86 (H) × 3.62 (V) mm | 6.78 (H) × 5.43 (V) mm | 11.26 (H) × 5.98 (V) mm |
| 画素サイズ | 3.75 (H) × 3.75 (V) μm | 5.3 (H) × 5.3 (V) μm | 5.5 (H) × 5.5 (V) μm |
| BU238M | BU302MG | BU406M | |
|---|---|---|---|
| 撮像デバイス | 1/1.2 型GS-CMOS (IMX174) |
1/1.8 型 GS-CMOS (IMX252) |
1.0 型GS-CMOS (CMV4000) |
| 解像度 | 1,936(H) × 1,216(V) | 2,048(H) × 1,536(V) | 2,048 (H) × 2,048 (V) |
| 画素数 | 2.3M | 3M | 4M |
| 撮像面積 | 11.25 (H) × 7.03 (V) mm | 7.07 (H) × 5.30 (V) mm | 11.26 (H) × 11.26 (V) mm |
| 画素サイズ | 5.86 (H) × 5.86 (V) μm | 3.45 (H) × 3.45 (V) μm | 5.5 (H) × 5.5 (V) μm |
| BU505MG | DU657M | |
|---|---|---|
| 撮像デバイス | 2/3 型 GS-CMOS (IMX250) |
1.1 型GS-CMOS (TELI Original) |
| 解像度 | 2,448 (H) × 2,048 (V) | 2,560 (H) × 2,560 (V) |
| 画素数 | 5M | 6.5M |
| 撮像面積 | 8.45 (H) × 7.07 (V) mm | 12.8 (H) × 12.8 (V) mm |
| 画素サイズ | 3.45 (H) × 3.45 (V) μm | 5.0 (H) × 5.0 (V) μm |
(2) カラーカメラ
| BU030C/CF | BU130C/CF | BU238MC/MCF | |
|---|---|---|---|
| 撮像デバイス | 1/3 型CCD (ICX424AQ) |
1/3 型CCD (ICX445AQ) |
1/1.2 型GS-CMOS (IMX174) |
| 解像度 | 640 (H) × 480 (V) | 1,280 (H) × 960 (V) | 1,936 (H) × 1,216 (V) |
| 画素数 | 0.3M | 1.3M | 2.3M |
| 撮像面積 | 4.88 (H) × 3.66 (V) mm | 4.86 (H) × 3.62 (V) mm | 11.25 (H) × 7.03 (V) mm |
| 画素サイズ | 7.4 (H) × 7.4 (V) μm | 3.75 (H) × 3.75 (V) μm | 5.86 (H) × 5.86 (V) μm |
| BU302MC/MCF | BU406MC/MCF | BU505MC/MCF | |
|---|---|---|---|
| 撮像デバイス | 1/1.8 型 GS-CMOS (IMX252) |
1.0 型GS-CMOS (CMV4000) |
2/3 型 GS-CMOS (IMX250) |
| 解像度 | 2,048(H) × 1,536(V) | 2,048 (H) × 2,048 (V) | 2,448 (H) × 2,048 (V) |
| 画素数 | 3M | 4M | 5M |
| 撮像面積 | 7.07 (H) × 5.30 (V) mm | 11.26 (H) × 11.26 (V) mm | 8.45 (H) × 7.07 (V) mm |
| 画素サイズ | 3.45 (H) × 3.45 (V) μm | 5.5 (H) × 5.5 (V) μm | 3.45 (H) × 3.45 (V) μm |
| DU657MC | BU1203MC/MCF | |
|---|---|---|
| 撮像デバイス | 1.1 型GS-CMOS (TELI Original) |
1/1.7 型RS-CMOS (IMX226CQJ) |
| 解像度 | 2,560 (H) × 2,560 (V) | 4,000 (H) × 3,000 (V) |
| 画素数 | 6.5M | 12M |
| 撮像面積 | 12.8 (H) × 12.8 (V) mm | 7.53 (H) × 5.64 (V) mm |
| 画素サイズ | 5.0 (H) × 5.0 (V) μm | 1.85 (H) × 1.85 (V) μm |
5.2. BG シリーズ
(1) 白黒カメラ
| BG030 | BG031 | BG080 | |
|---|---|---|---|
| 撮像デバイス | 1/3 型CCD (ICX424AL) |
1/2 型CCD (ICX414AL) |
1/3 型CCD (ICX204AL) |
| 解像度 | 640 (H) × 490 (V) | 1,024(H) × 768(V) | |
| 画素数 | 0.3M | 0.8M | |
| 撮像面積 | 4.88 (H) × 3.66 (V) mm | 6.52 (H) × 4.89 (V) mm | 4.86 (H) × 3.62 (V) mm |
| 画素サイズ | 7.4 (H) × 7.4 (V) μm | 9.9 (H)×9.9 (V) μm | 4.65 (H) × 4.65 (V) μm |
| BG130 | BG202 | BG205M-CS | |
|---|---|---|---|
| 撮像デバイス | 1/3 型CCD (ICX445AL) |
1/1.8 型CCD (ICX274AL) |
2/3 型GS-CMOS (CMV2000) |
| 解像度 | 1,280(H) × 960(V) | 1,600 (H) × 1,200 (V) | 2,048 (H) × 1,088 (V) |
| 画素数 | 1.3M | 2M | 2M |
| 撮像面積 | 4.86 (H) × 3.62 (V) mm | 7.16 (H) × 5.44 (V) mm | 11.26 (H) × 5.98 (V) mm |
| 画素サイズ | 3.75 (H) × 3.75 (V) μm | 4.40 (H) × 4.40 (V) μm | 5.5 (H) × 5.5 (V) μm |
(2) カラーカメラ
| BG030C/CF | BG130C/CF | BG202C/CF | |
|---|---|---|---|
| 撮像デバイス | 1/3 型CCD (ICX414AQ) |
1/3 型CCD (ICX445AQ) |
1/1.8 型CCD (ICX274AQ) |
| 解像度 | 640 (H) × 490 (V) | 1,280(H) × 960(V) | 1,600 (H) × 1,200 (V) |
| 画素数 | 0.3M | 1.3M | 2M |
| 撮像面積 | 4.88 (H) × 3.66 (V) mm | 4.86 (H) × 3.62 (V) mm | 7.16 (H) × 5.44 (V) mm |
| 画素サイズ | 7.4 (H) × 7.4 (V) μm | 3.75 (H) × 3.75 (V) μm | 4.40 (H) × 4.40 (V) μm |
| BG205MC-CS/MCF-CS | |
|---|---|
| 撮像デバイス | 2/3 型GS-CMOS (CMV2000) |
| 解像度 | 2,048 (H) × 1,088 (V) |
| 画素数 | 2M |
| 撮像面積 | 11.26 (H) × 5.98 (V) mm |
| 画素サイズ | 5.5 (H) × 5.5 (V) μm |